小林牧牛の世界

              

お地蔵さまが微笑むまで

器は長いこと、高木参平先生に教えていただいたのですが、陶人形を教えたくださる先生はみつかりませんでした。

基本は同じでも器と陶人形では分野が違います。

結局、一つ一つ手探りで歩く独学です。
まず、土を捜して作り焼きます。
気に入った土が見つかるまで、これを何度も何度も繰り返します。
それから、焼き方も器とは全く違いますから、焼いて壊れて焼いて壊れてをいやになるほど繰り返しました。
いつしか裏山にカケラの山ができてしまうほどでした。

なんとしてでも、強引に土をねじ伏せて形を作り、炎をもねじ伏せ焼こうとしていたので、土や火が怒っていたのでしょう。
こんな状態で作っていたものですから、出来上がった人形の顔はどれもこれも怖く険しい顔つきでした。

こんなことをしているうちに、焼きあがった窯をのぞくと一体、二体と無傷の人形が出来上がるようになっていきました。
そんな試行錯誤を繰り返していくうちに、人形の表情や形がだんだんと穏やかになっていきました。

いまは土と会話しながら、炎に感謝しながらの毎日です。

どんなことをしても壊れ万策尽きて、もがき苦しんだ時期は、仏さまのプレゼントだと思ってます。
この経験がなければ、自分だけの誰が見ても小林牧牛の陶人形だと分かる、優しい表情のお地蔵さんたちは生まれてこれなかったと確信してます。
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